ピンク色の路線図の大阪メトロ千日前線は、大阪のフル規格の地下鉄では珍しく4両編成という短さで運転されています。
ホームは長く、8両まで対応できる構造にもかかわらず、4両編成なので、使わない部分は柵でふさがれています。
鶴橋・谷町9丁目(上本町)・日本橋・難波と、大阪ミナミの中心部を駆け抜ける路線で、ニュートラム以外の大阪メトロ全路線と、近鉄・阪神と乗り換え駅が多くある路線にも関わらず、利用者数が思いのほかパッとしないのが実態です。
運転頻度も他の地下鉄路線と比べれば低く、輸送力に余力がある路線です。
ちなみに千日前線の真下には、大動脈の近鉄線が走っています。こちらは10両編成で朝夕のラッシュ時の運行頻度は高く、ほぼ限界状態となっています。
千日前線は4両編成のため、朝・夕の鶴橋〜難波間はかなり混雑しますが、それ以外の時間帯の利用者が伸びにくく、輸送力増強に踏み切れない千日前線。この千日前線が大化けするかもしれない「平野方面の延伸」について、レポートします。
大混雑の近鉄とは対照的な千日前線。
利用者数がパッとしない理由は、路線が大阪市内だけで完結しており、特に、利用者が多い大阪郊外や奈良方面からのアクセスに適していない路線だからです。
特に「鶴橋駅」より東側は、郊外につながっている路線との接続がないまま、終点の「南巽駅」に至ります。
もともと「大阪市営」の地下鉄なので、大阪市内の移動を目的としているので仕方ないものの、フル規格の地下鉄にも関わらず郊外からのアクセス路線としては機能できず、利用者が伸び悩むという状態となっています。
一方、大阪メトロ「今里筋線」の今里から湯沢6丁目交差点までの延伸計画もあります。
今里筋線は大阪の中心部を通らない路線のため、こちらも構造的に利用者が伸び悩んでいます。
現状の今里筋線の利用者の状況や、費用対効果から延伸計画が停滞している状況です。
千日前線の「南巽駅」から先は、近鉄大阪線弥刀駅方面(東方面)の延伸が計画されています。
この「東方面」の延伸は、交通の空白地帯の解消と、近鉄大阪線の混雑緩和がうたわれています。
ただ、この「東方面」への延伸計画には不思議な点がいくつかあります。
1つ目は、大阪市を出て東大阪市に入ってしまうこと。
市をまたぐと、建設費用の分担などいろいろと課題が多くなります。特に赤字の東大阪市にはかなり厳しい状況です。
2つ目は、地下鉄が通れるような幹線道路がまだできていない。
特に、東大阪市部分で下に地下鉄が走れそうな道路はありません。
加えて、千日前線の「東方面」への延伸の目的となっている 「交通の空白地帯の解消」 に寄与しないこと。
もう一つの目的である「近鉄大阪線の混雑緩和」に貢献しないことがあります。
「交通の空白地帯」と言われていたエリアは、先にJRおおさか東線が開業し、JR長瀬駅が設置され、その後、新たに衣摺加美北駅も設置されました。そのため、交通の空白地帯は解消されてしまいました。そのJRおおさか東線の利用者も、まあそれほど多いとは言えない状態ですが・・・。
さらに、近鉄大阪線弥刀駅での接続による、近鉄大阪線の混雑率の緩和がうたわれていますが、これは実態との乖離があります。
近鉄大阪線は、「弥刀付近〜鶴橋間」の混雑率が高くなっています。しかし、実際に混雑しているのは奈良県側(五位堂駅)から鶴橋まで「ノンストップ」で駆け抜ける快速急行です。快速急行は10両編成で朝のラッシュ時は10分間隔で運転されているにもかかわらずギュウギュウの状態です。また八尾方面から布施までノンストップで駆け抜ける準急や、大阪と奈良との府県境の河内国分から布施までノンストップの急行もかなり混雑しています。
一方、接続駅とされている近鉄大阪線の周辺は、普通しか停車せず、さらに高齢化のため大阪市内への通勤客も減少しているのが実情です。
近鉄大阪線で混雑しているのは東大阪市部分をノンストップで通過していく「快速急行」や「急行」や「準急」なので、千日前線が接続しても、近鉄の利用者が途中で乗り換えて、追加の時間と運賃をかけてまで千日前線を利用することはないでしょう。千日前線の東方面への延伸は、近鉄大阪線の混雑緩和にはあまり貢献しないのです。八尾付近まで延伸すれば状況が変わるかもしれませんが・・・建設費用が莫大になるのでしょう。
もう一つの千日前線の延伸計画が、「南方面」への延伸計画です。
「南方面」への延伸は、内環(うちかん)という幹線道路の下を、南巽からそのまままっすぐ平野方面へ進んでいくというもので、「南巽駅」から、「JR平野駅」「谷町線平野駅」へと進みます。
延伸区間の距離は約2.6kmという、比較的短い距離となります。
「東方面」への延伸は大阪市を出てしまいますが、「南方面」への延伸だと大阪市をでません。
課題としては、JR平野駅付近では大阪内環状線は地下の構造となっているので、千日前線がどのようにしてJR平野付近を通過するか、です。
千日前線の「南方面」への延伸は、JR大和路線と大阪メトロ 谷町線と接続することができるため、大阪東南部から奈良県に渡る広域の交通システムとしてメリットがあります。
JR大和路線は、奈良県のベットタウンの開発により、利用者が年々増加しています。また今後、奈良付近に新駅の建設も予定されています。
千日前線がJR平野まで延伸することで、JR大和路線と、大阪ミナミの千日前線の各駅や、今里筋線へのアクセスが大幅に改善されます。
乗り換え回数や所要時間が短縮でき、天王寺駅などの混雑も改善が見込まれます。
千日前線が、谷町線の「平野」まで延伸することで、谷町線の喜連瓜破・八尾南方面から、今里筋線や千日前線の各駅へのアクセスが便利になります。
また平野以南から大阪市内への通勤ルートが分散し、谷町線の混雑の解消にもつながります。
JR平野駅と地下鉄谷町線の平野駅は、同じ名前の駅ですが、1.5キロ程度離れています。この両「平野」駅が接続できることで、現状、ぐるっと天王寺まで行かないと乗り換えができないJR大和路線と谷町線間が移動できることになります。
今里筋線は、今里から湯沢6丁目への延伸計画が停滞している状況。千日前線が南方面へ延伸すると、今里筋線延伸計画区間の東側1キロ付近を千日前線が通ることになります。そうなれば、今里筋線延伸の代替え路線としても機能することになります。
千日前線には車庫がないため、現状、中央線を経由して森ノ宮の車庫へ移動していますが、地下鉄平野で谷町線と千日前線が相互に通行可能になる連絡線が設置された場合、八尾南の車庫などの谷町線の車庫もうまく利用することができるようになります。
このように、延伸により、千日前線利用者の増加が見込まれます。編成数の増加など、千日前線の輸送力強化もセットで必要となりますが、千日前線と同規格の谷町線との車両基地の共有ができるなど、運行管理上のメリットも生じます。また、停滞している今里筋線の延伸の代替えルートとしても機能してきます。
たった2.6kmの延伸で、利用者数のアップと、大阪東部や奈良県からの人の流れがガラッと変わる可能性がある「千日前線 南方面への延伸」、早期に実現できれば良いですね!!
悩みは・・・JR平野駅と谷町線の平野駅、離れているのにどちらも「平野駅」。どのような名前になるか悩ましいですね。
◆大阪市内の電車路線図・地下鉄乗り換え情報
【大阪・電車路線図】大阪市営地下鉄・JR・私鉄の鉄道路線図[PDF]&地下鉄乗り換え情報・アクセスマップ
それぞれの駅間は500mぐらいで、それほど離れていません。(上の画像は旧バージョン)